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- 加害者が自動車(原付を含む)でない場合。例えば、自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争
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- 搭乗者傷害保険や人身傷害保険など、自分が契約している保険会社又は共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争
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- 自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定、有無責に関する紛争
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- 求償に関する紛争(保険会社間、医療機関、社会保険等との間の求償)
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- 相手方の保険会社等が不明の場合
双方に過失がある交通事故が起きた場合、通常はお互いの保険会社同士で話し合いが始まります。この話し合いがまとまると示談となり解決になります。事故発生当初、ドライブレコーダー映像や目撃証人が確保できれば決定的な証拠になり早期解決も可能になります。
しかし、証拠が無い時は状況の聞き取りをベースにして交渉がスタートしますので、双方の言い分が違うということが頻繁に起こります。
事故の報告を受けたのち、保険会社の事故処理担当者は自社の契約者の意向に沿って交渉を進めます。双方が早期解決を希望していてすぐに解決に至るケースも多いですが、心情的にどうしても譲歩できない場合は交渉そののもが進まなくなることがあります。
そのような困った状況になった場合、選択肢の一つに交通事故紛争処理センターを利用することで、こう着状態を打開して解決まで進むことがあります。
一般的な交通事故の解決方法は、保険会社同士で話し合う形や、個人で弁護士に依頼する方法ですが、今回はもう一つ選択肢である交通事故紛争処理センター(紛セン)について解説していきます。
交通事故紛争処理センターは、交通事故で揉めている際に和解の機会をあっ旋してくれる場所と覚えていただくとわかりやすいでしょう。
加害者、被害者間の紛争解決をサポートしてくれる公益財団法人ということで、交通事故の損害賠償に関する法律相談、和解斡旋、審査の業務を行っています。利用の際はセンターが選任した弁護士が担当になり、公正中立な立場から対応にあたってくれます。
全国に本部、支部及び相談室が11ヵ所設けれれており、いずれも無料で利用することが可能です。
県内では静岡市に相談室があります。
全国の交通事故紛争処理センター所在地 https://www.jcstad.or.jp/map/
まず、冒頭で説明したような自動車同士の事故で保険会社の話し合いが頓挫している状況が考えられます。
事故発生からある程度の期間保険会社に交渉させておいて途中で変更しても良いのか、もしかしたら疑問に思う方もいるかも知れません。
その点については、センターの設立経緯、運営費用の拠出元(共済や保険会社が負担しています)を見れば保険会社も認めている手段だと確認できますので心配は無用です。ただし、慣例として保険会社から自分の契約者に積極的に提案されることはないものですから、必要に応じて自ら動く必要があります。まずはセンターを利用できるか事故の担当者に聞いてみるのが良いでしょう。
次に考えられるのは、自分の自動車保険に弁護士特約が付いていないケースです。
個人で弁護士に依頼して調停や訴訟になると、当然ですがお金も時間もかかります。その点、弁護士特約があればお金の部分はカバーされて依頼しやすいですが、特約加入が無ければ自己負担になってしまいます。
事故の種類や規模によっては自己負担をしてでも依頼すべき時はありますが、個人で判断して弁護士事務所に相談に行くのは少し敷居が高く感じるかもしれません。その点、交通事故紛争処理センターは無料の相談先ですので安心して利用が可能です。
それからもう一つ、ご自身が歩行者や自転車に乗っていて被害者になったようなケースです。いわゆる車に轢かれてしまったという事故です。
交通事故処理の基本的な考え方の一つに弱者救済というものあります。その考え方によると、道路上では自動車に比べ歩行者や自転車は弱者という位置付けになりますから、被害者に多少の過失があってもそれは大目に見てもらえる可能性が出てきます。そのような事故で、仮に相手の過失が100%の事故だったとします。被害者は当然相手が100%面倒を見てくれているのだから問題ないだろうと考えますよね。10対90くらいでもそう感じるかも知れません。
そのような心理状態で、加害者の保険会社の担当者(プロ)と被害者の個人(素人)は示談の方向に向けて話が進行していきます。そもそも交通事故の経験値が高い人というのは極めて少ないものです。それに加えて、プロと素人では当然ですが知識や交渉の力量に雲泥の差があることは想像できるはずです。
仮に被害者に寄り添うような姿勢が見られても、保険会社は被害者の味方ではありません。あくまで保険会社は営利企業、そして担当者は交渉のプロであることを忘れない方が良いです。
最終的に保険会社から提示された示談金に納得ができれば、そのまま示談してももちろん問題ありません。ご自身が決めることです。しかし、不安があったり、第三者に見てもらいたいという希望があれば、交通事故紛争処理センターは良い選択肢の一つと言えます。
ただ、気をつけていただきたいのは、一旦示談が成立してしまってから相談では遅いという点です。必ず示談する前、保険会社から具体的な補償額の提示がされたらセンターに相談の予約電話を入れると良いでしょう。
困った時に無料で相談できる交通事故紛争処理センターですが、すべての交通事故について相談の対象にしているわけではありません。
同センターのホームページには、取り扱わない業務として以下のような記載があります。
上記の5つは業務対象外となっています。少しわかりにくいので要約すると以下のような意味になります。
これは、後遺障害の等級認定をする機関は別に存在しており、異議申し立ての仕組みもあるのでそちらを利用するべきという意味でしょう。そもそも後遺障害の等級が確定するまでは賠償額の計算そのものができないので、等級が決定しないうちは相談に乗れないということだと思います。
次の場合は、原則センターで行わない業務だけれども、相手型の同意があれば場合によっては手続きを行うとなっています。該当する場合はセンターに電話で事前に確認する方が良さそうです。
上記の3つについては以下のような意味になります。
自分で弁護士に依頼し調停や訴訟になる場合は報酬や手数料などの料金がかかってきます。それらの金銭的な負担がかからず事故解決できるというのは大きなメリットでしょう。
訴訟に比べると解決までにかかる時間が短くて済みます。電話で予約の後、相談担当弁護士のヒアリング、それから日程の調整がされて和解の話し合い期日が設定されます。
センターの担当弁護士は公平中立な立場で和解あっ旋を行います。その際、過去の判例等の根拠に基づいて双方に和解を促すことになりますのでどちらかに肩入れすることがありません。感情論ではなく、本来あるべき解決に近い結果が期待できます。
和解あっ旋や審査で決定したことは、加害者側の保険会社にとって不利な結果でも従うことになっています。
一度決まったことに従う必要があるということで拘束力があると言えます。
まずは電話で予約が必要です。その後はセンターから申し込み書類が送られてきます。それら申込書類の記入とその他必要な書類を用意して担当弁護士との面談の流れです。
初回面談時には事故状況の客観的な資料を用意する必要があります。
交通事故紛争処理センターのHPより
センターのデータによると、3回までの斡旋で65%前後、5回までの斡旋で90%弱の事案が和解に至っているようです。裁判をするよりも早く解決できるのがメリットの一つでしたが、時間をとって相談室に行く労力はある程度考えておく必要がありそうです。ちなみに、一回のあっ旋にかかる時間は1時間程度になります。
5回までの斡旋で9割の事故は和解に至るようです。では残りの1割の方はどうすべきかと言う問題があります。
その場合、あっ旋が不調に終わったということで、次の段階の審査を申し立てることが可能になります。
事故や法律に精通した学者、裁判官経験者、弁護士など構成された審査会が、再度双方から事故状況の説明を受けた上で裁定(結論)を出します。
ここで出た裁定(結論)に双方が合意できれば晴れて示談が成立し終了となります。センターとしてのサービスはここまでになります。
みらいほけんでは自動車事故に関することや自動車保険に関するご相談を承っています。確認したいことやアドバイスなどのご希望がありましたら担当者までお気軽にお声掛けください。